法人カードの基本をおさえる
法人カード払いの領収書はインボイスになる?仕入税額控除を受けるためのポイント
公開日:2025年6月26日
法人カードで経費を支払った際は、インボイス(適格請求書)を受け取れるかどうかが重要です。インボイスがなければ、仕入税額控除を受けられず、消費税の納税額が多くなってしまいます。
法人カードで支払いをした場合、インボイスにあたる書類は「レシート」であり、「領収書」はインボイスには該当しません。 ただし、レシートにインボイスの必須項目が記載されている必要があります。
そこで、仕入税額控除の概要やインボイスの記載項目、インボイス対応に向けて法人カードを導入するメリット、経理担当者の運用ポイントを説明します。図解を用いてわかりやすく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
この記事でわかること
- 仕入税額控除やインボイスの概要
- 法人カードの導入メリット
- 法人カード導入後のインボイスへの対応の仕方
目次
仕入税額控除を受けるにはインボイス(適格請求書)の保存が必要
仕入税額控除を受けるには、インボイス(適格請求書)の保存が必要です。
仕入税額控除とは、「売り上げ時に受け取った消費税額」から「仕入れなどの際に支払った消費税額」を差し引くことをいいます。
インボイスの有無によって、消費税の納税額が異なります。
受け取った請求書や領収書がインボイスの要件を満たさなければ、仕入税額控除が受けられず、納める消費税が増えてしまいます。
対象者は適用要件を満たせば一定期間インボイス不要の経過措置あり
一定の売上規模以下の課税事業者が税込1万円未満の課税仕入れを行った場合は、経過措置としてインボイスの保存をしなくても帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められます。これを「少額特例」といいます。
[対象事業者]
次のいずれかにあてはまる事業者
- 基準期間(※1)における課税売上高が1億円以下の事業者
- 特定期間(※2)における課税売上高が5千万円以下の事業者
- 1 事業年度が1年である法人の場合はその事業年度の前々事業年度
- 2 前事業年度の開始の日以後6ヵ月の期間
[適用対象期間]
2023年10月1日から2029年9月30日までの期間に行う課税仕入れ
少額特例はあくまでも経過措置です。2029年10月1日以後に仕入税額控除を受けるには、すべての事業者にインボイスが必要となります。
受け取ったインボイスは最大7年間の保存が必須
消費税の仕入税額控除を受けるには、受け取ったインボイスを、「事業年度の最終日」または「インボイスを受領した日の属する課税期間の末日」の翌日から2ヵ月を経過した日から7年間保管しなければなりません 。
たとえば、3月決算の法人の場合は、2025年に受け取ったインボイスを2033年5月31日まで 保存する必要があります。
法人カード払いの場合のインボイス(適格請求書)はレシート
法人カードで支払った場合は、商品購入時に受け取るレシートがインボイス(適格請求書)に該当します。
クレジットカードで商品を購入したときは「レシート」「クレジット売上票」「領収書」、さらにクレジットカードの利用金額が確定したときに確認できる「利用明細」の4つが受け取れますが、インボイスとして該当する書類はレシートのみです。
ただし、レシートにはインボイスとしての必須項目が記載されている必要があります。
クレジットカード払いの場合の領収書はインボイス(適格請求書)に該当しない
クレジットカードで支払った場合は、領収書を別途発行してもらう必要はありません。
店舗によっては領収書を発行してもらえる場合もありますが、クレジットカード払いでは支払い時に金銭の受け渡しが発生していないため、領収書は支払いの証明になりません 。
インボイス(適格請求書)の必須記載項目
インボイス(適格請求書)には、請求書発行者の氏名やインボイスの登録番号などの項目が記載されている必要があります。
- 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
- 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額など(※1)
- 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
- 1 端数処理は、ひとつの適格請求書につき、税率ごとに1回ずつ
自社が適格請求書発行事業者の場合は、これらの必須項目を記載しなければならない点も理解しておきましょう。
業種によっては簡易インボイス(適格簡易請求書)が認められる
小売業や飲食店の場合は、インボイス(適格請求書)よりも簡易的な内容の記載が認められています。そのため、小売店や飲食業から受け取った領収書に次の項目が記載されていれば、仕入税額控除の対象となります。
- 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
- 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額など(※1)
- 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
- 1 端数処理は、ひとつの適格請求書につき、税率ごとに1回ずつ
簡易インボイスが認められる業種は次の通りです。
- 小売業
- 飲食店業
- 写真業
- 旅行業
- タクシー業
- 駐車場業(不特定かつ多数の者に貸し出す場合に限ります。)
- その他これらの事業に準ずる事業で不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業
インボイス制度対応時にも役立つ、 法人カードの導入メリット
インボイス制度により、経費の適格請求書対応や仕訳の正確性など、日常の経理業務に加えて確認作業の負担が増えてしまいます。
こうしたなか、法人カードを導入することで、経費処理やインボイス管理の効率化が期待できます。
たとえば、カードの利用履歴が残ることで、「どの支払いに領収書が提出されたか」をスムーズに確認でき、入力漏れや確認ミスといったトラブルの防止につながります。
さらに、会計ソフトと連携可能な法人カードを活用すれば、利用明細が自動で反されるため、仕訳作業の手間も軽減されます
このほかにも、従業員の立て替え負担をなくせる点や、ポイントを活用して経費節減につなげられる点など、法人カードにはさまざまなメリットがあります。
従業員が経費を立て替える必要がない
会社として経費の支払いを法人カードに一本化し、経費を支払う可能性のある従業員に追加カードを渡せば、個人に金銭的な負担をかけることがなくなります。
法人カードを導入せずに従業員が経費を立て替えた場合、立替分が従業員に返金されるまでに1週間や1ヵ月分かかる企業もあるでしょう。仮に1ヵ月分の経費をまとめて立て替えている場合は、従業員にとって大きな負担となっていることが考えられます。
ポイントがたまる
法人カードによっては、利用合計金額に対してポイントがたまります。仕入れや経費などの支払いを法人カードに一本化すれば、多くのポイントをためられるでしょう。
ためたポイントは、備品購入の際に利用したり、利用金額の支払いに充てたりできます。従業員用のお茶菓子や社員旅行の費用などに活用することも可能です。
上手に活用すれば、経費削減や従業員の満足度向上が期待できます。
法人カード導入後のインボイス制度対応イメージ
法人カード導入後のインボイス制度への対応イメージは、次の通り です。
従業員が法人カードを使って支払った際は、必ず証憑(レシート)を提出してもらいましょう。経理担当者は、証憑をもとに記帳し、提出された証憑がインボイス(適格請求書)に対応しているか(=仕入税額控除に該当するか)をあわせて判断しましょう。
会計ソフトを活用している場合は、会計ソフトに反映された法人カードの利用明細と従業員から提出された証憑を照らし合わせたうえで仕訳を行います。インボイス対応かの確認は、会計ソフトが自動判断できる場合が多いため、経理担当者は最終確認のみで済むでしょう。
インボイス制度に対応するための法人カードの使い方と注意点
ここからは、従業員が法人カードを利用して経費を支払ったあとの、経理担当者の対応や注意点を解説します。
法人カードをこれから導入する場合はもちろん、すでに発行済みの場合も、スムーズに業務を進めるために、これらの運用ポイントを踏まえた社内ルールを策定することもあわせて検討しましょう。
レシートを必ず提出してもらう
従業員が法人カードで支払った際は、レシートを提出してもらうことが重要です。
法人カードで支払った仕入れや経費の仕入税額控除を受けるには、インボイス(適格請求書)または簡易インボイス(適格簡易請求書)にあたるレシートを保管する必要があります。
法人カードで支払った際には、レシートだけでなくクレジット売上票や領収書など複数の書類を受け取るため、従業員が混乱する可能性も考えられます。「レシートを提出すること」を周知徹底するようにしましょう。
レシートがインボイス(適格請求書)に該当するかを確認する
経理担当者は、従業員が支払った経費が仕入税額控除の対象かを精査するためにも、提出されたレシートがインボイス(適格請求書)の記載事項を満たしているかの確認が大切です。
会計ソフトによっては、受け取ったレシートをアップロードするだけでインボイスの対応可否を判定してくれます 。インボイスの対応可否を自動判定できる場合は、経理担当者はその判定結果を確認するだけで済みます。
レシートを適切に保存する
インボイス(適格請求書)は、7年間保存しなければなりません。大量なデータをいつでも見られるよう、取引年月日や取引金額、取引先の名称を検索できる形式で保存しておくとよいでしょう。
インボイスに該当する書類は、法人カード支払い時のレシートのほかにも、仕入れ先から受け取る請求書や納品書などさまざまです。自社が発行したインボイスも保存しなければなりません。
なお、電子データでやりとりした場合は、やりとりした電子データのまま保存する必要があります 。
法人カードを使ってWEBサイトで商品を購入した場合は、WEBサイト上で領収書をダウンロードし、電子データのまま保管しておきましょう 。本来なら、ECサイトで購入した場合は、購入履歴などで確認できる状態であれば領収書の保管は不要です。ただし、各従業員のアカウントで支払うことも考えられるため、領収書を都度保管しておくほうが望ましいでしょう。
二重計上に注意する
従業員から、レシートだけでなくクレジット売上票や領収書など複数の書類が提出されることも考えられます。その場合であっても、複数書類の日付や名称、金額をチェックし、二重計上しないように注意しましょう。
会計ソフトと法人カードを連携していれば、会計ソフトに反映される明細データは1件のみのため、二重計上を起こしにくくなります。
事業の規模にあわせて選べるJCBの法人カード
JCBでは、事業規模にあわせて選べる2種類のビジネスカード「JCB法人カード」と「JCB Biz ONE」を提供しています。そのため、自社にあったビジネスカードを選ぶことが可能です。
「JCB法人カード」と「JCB Biz ONE」の主な違いは、年会費や従業員向けの追加カード・ETCの発行枚数、付帯サービスです。旅行傷害保険や国内・海外航空機遅延保険といった付帯保険の補償内容は、カードの種類によって異なります。詳細は別途各カード詳細ページをご確認ください。
カードフェイス | ![]() JCB Biz ONE 一般 | ![]() JCB Biz ONE ゴールド | ![]() JCB一般法人カード | ![]() JCBゴールド法人カード | ![]() JCBプラチナ法人カード |
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年会費 | 永年無料 | 5,500円(税込) 初年度無料(※1) 【年間100万円以上利用で翌年度も無料】 | 1,375円(税込) 初年度無料 (オンライン入会のみ)(※1) | 11,000円(税込) 初年度無料 (オンライン入会のみ)(※1) | 33,000円(税込) |
申し込み対象 | 法人代表者 または 個人事業主 (フリーランス・副業含む) カード使用者は18歳以上の方が対象 | 法人代表者 または 個人事業主 (フリーランス・副業含む) カード使用者は20歳以上の方が対象 | 法人代表者 または 個人事業主 カード使用者は18歳以上の方が対象 | 法人代表者 または 個人事業主 カード使用者は20歳以上の方が対象 | 法人代表者 または 個人事業主 カード使用者は25歳以上の方が対象 |
使用者カード 追加有無 | ー | 複数枚 | |||
ETCカード 発行可能枚数 | 1枚 (年会費無料) | 複数枚 (年会費無料) | |||
決済口座 | 【法人代表者の場合】法人口座、個人名義口座 【個人事業主の場合】屋号付き口座、個人名義口座 | 【法人の場合】法人口座 【個人事業主の場合】屋号付き口座、個人名義口座 | |||
旅行傷害保険 (死亡・後遺障害の場合) | ー | 〇 | 〇 | 〇 | |
国内・海外航空機遅延保険 | ー | ー | 〇 | 〇 | |
ショッピングガード保険 | ー | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
サイバーリスク保険(損害賠償責任保険付) | ー | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
ポイント還元(※3) | 毎月のご利用合計金額1,000円(税込)で Oki Dokiポイント2ポイント ポイントをマイルへ移行可能 | 毎月のご利用合計金額1,000円(税込)で Oki Dokiポイント1ポイント | |||
プレミアムサービス | ー | 空港ラウンジサービス ドクターダイレクト24 人間ドックサービス | ー | 空港ラウンジサービス ドクターダイレクト24 人間ドックサービス ゴルフサービス 等 | 空港ラウンジサービス ゴルフサービス プライオリティパス プラチナコンシェルジュ ドクターダイレクト24 人間ドックサービス |
- 1 お切り替えの方は初年度年会費無料の対象となりません。
- 2 1枚目のカードが年会費無料の場合、追加のカードも無料。
- 3 優待店により特典・条件等が異なりますので、ご利用前に必ずオリジナルシリーズ専用サイトからで最新情報をご確認ください。


ビジネスカードとは、法人カードのなかでも中小企業・個人事業主向けのカードです。大規模企業は「JCB コーポレートカード」が可能です。
会計ソフト連携先が豊富で会計業務を効率化できる
JCBのビジネスカードは、連携できる会計ソフトが豊富です。
- マネーフォワードクラウド会計
- FXクラウドシリーズの「銀行信販データ受信機能」
- 弥生
- freee会計
- ソリマチ
経理作業をスムーズに行うためにも、法人カードの申し込みと同時に、会計ソフトの申し込みを済ませておくことがおすすめです。
無料の資金管理サービス「Cashmap」で複数の銀行口座や法人カード、請求書などを一元管理できる
JCBの法人会員になると、JCB法人カード会員専用の資金管理サービス「Cashmap」を無料で利用できます。
「Cashmap」に銀行口座や法人カード、請求書などの情報を取り込むことで、複数の情報を一元管理できるサービスです。銀行口座やカードごとの支払金額や残高はもちろん、いつどのように入出金の動きがあったかを確認できるため、将来の入出金をシミュレーションしながら、資金計画を立てることが可能です。
よくある質問
-
法人カードで経費を支払った場合に、領収書は必要ですか?
-
法人カードで支払った場合は、領収書の発行が不要です。
クレジットカード払いでは支払い時に金銭の受け渡しが発生していないため、領収書は支払いの証明になりません。支払いの際に渡されるレシートを必ず提出しましょう。 -
法人カードで支払った場合に、クレジットカードの明細書はインボイスになりますか?
-
クレジットカードの利用明細は、一般的にインボイス記載事項を満たす書類には該当しません。
インボイス(適格請求書)に対応するレシートを保存することで仕入税額控除を受けられます。 -
クレジットカード払いのレシートはインボイスに該当しますか?
-
レシートにインボイス(適格請求書)の必須項目が記載されていれば、インボイスとして認められます。インボイスの必須項目は次の通りです。
- 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
- 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等※
- 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
-
インボイス制度に対応するために法人カードをどのように運用したらよいですか?
-
法人カードを活用してインボイス制度に対応するには、経理担当者が次のポイントを押さえて運用することが重要です。
- レシートを必ず提出してもらう
- レシートがインボイス(適格請求書)に該当するかを確認する
- レシートを適切に保存する
- 二重計上に注意する
日々の業務が消費税の納税額に関わってくるため、「インボイス制度に対応するための法人カードの運用ポイント」を確認しながら、運用していきましょう。
- 詳しくは「インボイス制度に対応するための法人カードの使い方と注意点」をご覧ください。

- 【監修者】
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氏名:高柳政道(たかやなぎ まさみち)
資格:一級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP、DCプランナー2級一級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得後、2020年5月に金融コラムニストとして独立。企業に属さないFPとして投資商品の選び方を中心に情報を発信。
資産運用・生命保険・相続・ローンなど、多岐に渡るジャンルの執筆及び監修業務を手掛け、関わった記事数は500を超える。
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法人カードで決済した支払いでも、条件を満たしていればインボイス(適格請求書)に対応することは可能です。クレジットカードの場合は後払いになる関係で領収書が発行されることは少ないですが、必要事項が記載されたレシートがあれば仕入税額控除をすることができます。ただし、クレジットカード会社が発行する「利用明細」はインボイスとしては認められないため、レシートを確実に保管するように社員に周知しましょう。