法人カードの基本をおさえる
コーポレートカードは個人利用してもいい?してはいけない理由や私的利用への対策
公開日:2025年8月29日

会社から渡されたコーポレートカードは、主に事業に関する支出を支払うためのクレジットカードであり、従業員が個人利用してはいけません。従業員が個人の判断で私的に利用すると、会計処理が複雑になるなど会社に迷惑をかけることになり、場合によっては、始末書や減給などの処分を受ける可能性があります。
そこで、従業員向けに、コーポレートカードを個人利用してはいけない理由や、個人利用による影響を解説します。あわせて、経理担当者またはカード管理担当者向けに、個人利用を防ぐ具体的な方法を紹介します。
この記事でわかること
- コーポレートカードを個人利用(私的利用)してはいけない理由
- コーポレートカードを個人利用(私的利用)することによる影響と対処法
- コーポレートカードの個人利用(私的利用)を防ぐ方法
目次
コーポレートカードは個人利用(私的利用)してはならない
従業員に渡されたコーポレートカードは、一般的に個人利用してはなりません。
コーポレートカードは、大規模企業向けの法人カードであり、主に事業に関する支払いを目的としたクレジットカードです。各従業員には、経費精算を効率的に行う手段として渡されているため、個人的な買い物などに利用しないようにしましょう。
実際に、度重なる不正利用の末、背任罪により逮捕や懲戒解雇された事例もあります。コーポレートカードは会社のお金を使うものであることを十分に理解したうえで、扱いに注意しましょう。
コーポレートカードには会社決済型・個人決済型がある
個人決済型のコーポレートカードであれば、個人利用が可能な場合があります。
コーポレートカードには、利用金額が法人口座から引き落とされる「会社決済型」と、カード使用者の口座から引き落とされる「個人決済型」の2種類の支払方式があります。
個人決済型のコーポレートカードでは、カード利用金額が従業員の個人口座から引き落とされ、そのうち経費利用分のみを精算する流れとなっています。そのため、個人利用してもよい場合があります。
ただし、個人決済型のコーポレートカードであっても、社内規定などで個人利用を禁止または制限している場合もあります。「個人決済型だから」と自己判断せず、会社にあらかじめ確認したほうがよいでしょう。
会社決済型のコーポレートカードで個人利用してはいけない理由
会社決済型のコーポレートカードで個人利用してしまうと、会計処理を行う部署にも迷惑をかけたり、個人利用を行った従業員が処分を受けたりする場合があります。
カードの利用規約に利用目的が記載されている
前提として、コーポレートカードの利用規約には、事業費の支払が利用目的である旨が記載されています。
契約者かつ支払者である法人は、クレジットカード会社が定める会員規約を遵守しなければなりません。
従業員に渡されたコーポレートカードは、あくまでも貸与されているクレジットカードです。従業員が個人の判断で私的に利用してしまうと、会社に迷惑がかかることを理解しておきましょう。
会計処理が複雑になる
通常、従業員が会社決済型のコーポレートカードで経費の支払いをした場合、レシートなどの証憑の提出が必要です。経理担当者は、カードの利用明細と証憑を照らし合わせたうえで会計処理を行います。
しかし、従業員による個人利用があると、利用内容の精査や返金手続きといった追加業務が発生し、会計処理が複雑になります。
従業員の個人利用により発生する追加業務
- 個人利用分の確認・報告
- 仕訳
- 精算
- 体制の見直し
- ルールの改善
- ルールの再周知 など
従業員は、コーポレートカードの個人利用をした場合、すぐに上司や経理などの担当部署に報告しましょう。
なお、経理担当者が従業員の個人利用分を仕訳する際は「仮払金」で処理するとよいでしょう。
場合によっては社内規定による処分を受ける場合がある
法人カードの個人利用禁止の項目が会社の規定に明記されている場合は、始末書や減給などの処分を受ける可能性があります。
法人カードのマイルやポイントも個人利用してはいけない可能性がある
コーポレートカードを含む法人カードは、個人カードと同様に、利用合計金額に応じてマイルやポイントがたまる場合があります。
ただし、コーポレートカードにたまったマイルやポイントを利用してよいかどうかは、会社に確認しましょう。
会社の規定でポイント利用が禁止されている場合に、個人で利用してしまうと、規定違反となり懲戒処分となる可能性があります。
なお、ポイント制度がある法人カードでは、法人カードを申し込んだ法人会員または管理者にポイントが集約される仕組みになっており、従業員が利用できないケースが多くなっています。
会社決済型のコーポレートカードで個人利用を防ぐ方法
従業員がコーポレートカードを個人利用しないようにするには、会社として仕組みを整えることも重要です。
従業員数が多くなるほど管理体制を整える必要が高くなるといえるでしょう。
個人利用を禁止する社内ルールを制定する
コーポレートカードの個人利用を防ぐためにも、就業規則や社内ルールなどで個人利用を禁止しましょう。具体的な禁止事項や罰則規定を盛り込むことで曖昧さを排除し、利用者の誤解や不正を防止できます。
なお、法人カードにたまるマイルやポイントの個人利用も防ぎたい場合は、その旨も明記しておきましょう。
制定したルールを周知徹底する
ルールを制定しただけでは、効果が限定的です。全従業員に対して周知徹底し、コーポレートカードの使用目的や禁止事項をしっかり伝えましょう。
ルールを記載した就業規則は、従業員がいつでも閲覧できるようにしたうえで、入社時のオリエンテーションや定期的な社内研修、メールや社内ポータルでの告知を活用するとよいでしょう。
また、カード貸与時には同意書を取得するなど、意識付けを強化する施策も効果的です。従業員の理解が深まることで、ルール違反の抑止力が高まります。
カード利用者を選定する
大規模企業向けのコーポレートカードは、従業員の数だけ追加カードを発行できますが、すべての従業員に追加カードを付与する必要はありません。経費を支払う従業員のみに追加カードを発行するとよいでしょう。
追加カードを発行するほど年会費がかかる場合もあるため、発行する追加カードの枚数を制限することで、年会費を最低限に抑えることも可能です。
また、法人カードによっては、部署名義で発行できる場合があります。複数人が経費利用する部署では、部署ごとに1枚の追加カードを発行し、部署の責任者に管理を任せるのも方法のひとつです。
部署名義のカードであれば、人事異動などで部署内の利用者が変わった場合も継続して使える点もメリットでしょう。
カードごとに利用可能枠(限度額)を設定する
コーポレートカードを含む法人カードは、追加カードごとに利用可能枠(限度額)を設定できる場合があります。
必要金額以上に利用できないように利用可能枠を設定しておけば、個人利用などの不正利用だけでなく、使い過ぎの防止も期待できます。
利用可能枠だけでなく支払先などを設定できる場合もあります 。カードの特性を活用しましょう。
ガバナンス強化につながる 会社決済型の「JCBコーポレートカード」
「JCBコーポレートカード」は、大規模企業向け・会社決済型のコーポレートカードです。年会費は33,000円で、追加カードごとの年会費は無料です。
経費の利用実態にあわせて、従業員向けに追加カードやETCカードを枚数制限なしで発行できます。これにより、従業員による立替がなくなり、経理担当者による経費精算の負担軽減が期待できます。
カード管理が簡単にできる管理者向けサイト「JCB法人WEBサービス」
「JCB法人カードWEBサービス」は、契約情報や請求書、ご利用代金明細情報などをウェブサイト上で確認できる法人様向けのサービスです。使用状況をリアルタイムで把握できます。
企業や部署、費目別に支出を一元管理して全体のコストを見える化できるため、予算超過や不正支出を早期に発見でき、経費削減ポイントの見極めに役立ちます。
社員の経費利用をコントロールできる
「JCBコーポレートカード」は、利用可能枠(限度額)を企業または使用者単位に設定できるため、必要以上の経費利用を防止できます。
カード利用明細で正確な利用日時・利用場所などを把握でき、不正利用のリスクを大幅に削減できます。
会社決済型のコーポレートカードで個人利用してしまった場合の対処法
コーポレートカードを誤って私的に使ってしまった場合は、できるだけ早く上司や経理担当者に報告しましょう。黙っていたり繰り返したりすると、故意の利用とみなされ処分の対象となる可能性があります。
レシートや利用明細を準備し、金額や店舗名などを明確に伝えるのが理想です。返金も必要になるため、お金を用意しておきましょう。
会社のお金は日々動いており、経理担当者は正確な帳簿管理が求められています。個人利用は処理の混乱を招くため、コーポレートカードを利用する際は「会社のお金を使っている」という意識を常に持ちましょう。コーポレートカードの利用対象の用途であるか迷ったときは、会社の規定を確認するのが確実です。
よくある質問
-
コーポレートカードは個人利用(私的利用)できますか?
-
コーポレートカードは、一般的に経営者や従業員が私的に利用してはいけません。
ただし、利用金額が従業員の個人口座から引き落とされる「個人決済型」のコーポレートカードの場合は、個人利用できる場合があります。個人決済型のコーポレートカードであっても、社内規定で個人利用が禁止されている可能性もあるため、あらかじめ確認することが大切です。 -
コーポレートカードはなぜ私的利用をしてはいけないのですか?
-
コーポレートカードとは法人カードの一種であり、事業に関する費用を支払うことを目的としたクレジットカードであるため、従業員が私的に利用してはいけません。
実際に、コーポレートカードの規約には「事業費の支払いを利用目的としてカードを利用できる」などと明記されています。 -
コーポレートカードの私的利用を防ぐためにどんな方法がありますか?
-
コーポレートカードの管理担当者は、コーポレートカードの利用上のルールを取り決め、社内に周知徹底することが大切です。
ルールを制定した直後だけでなく、従業員がいつでも見られるように掲示板や社内ポータルサイト内に掲示しておくとよいでしょう。
また、必要金額以上に利用できないよう、カードごとの利用可能枠(限度額)や支払先などを制限することも有効です。
従業員50名以上の大規模企業向け
経理・財務担当者の課題を一度に解決

カバナンス強化につながる
法人会員向けサービスをご用意
- 掲載内容は予告なく変更となる場合があります。
- 【監修者】
-
氏名:飯田 道子(いいだ みちこ)
資格:ファイナンシャル・プランナー(CFP認定者)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、他金融機関勤務を経て96年FP資格を取得。現在は各種相談業務やセミナー講師、執筆活動などをおこなっています。どの金融機関にも属さない独立系FPです。海外移住にも対応しており、特にカナダや韓国への移住や金融・保険情報を得意としています。
関連記事を見る



コーポレートカードは、あくまでも会社がベースとなって発行を受けているカードです。そのため、ほとんどの会社で個人での利用を制限しています。個人で利用してしまうと経費の精算に手間がかかるだけでなく、懲戒処分の対象になってしまう可能性もあります。コーポレートカードを利用するときには必ず会社の利用規則を確認し、どのようなケースで利用できるのかを把握し、正しく利用することが大切です。